大判例

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東京高等裁判所 昭和29年(ネ)1577号 判決

然しながら、被控訴人がその主張の如く本件土地を訴外真壁章一に賃貸した事実については、これを認めるに足る証拠がなく、却て、成立に争のない甲第三号証、乙第一号証中成立に争のない昭和二十六年七月二十七日附領収書の「以下鈴木分」とある部分以外の記載部分、原審証人市川源太郎、原審における控訴本人、被控訴本人当審における控訴本人の各供述を綜合すれば、被控訴人の父市川源太郎が被控訴人の承諾を得て自ら貸主となり昭和十九年七月十三日真壁章一に対し本件土地を建物所有の目的の下に賃料一カ月金十二円六十銭と定めて、賃貸した事実が認められる。

而して、真壁章一が本件土地上に本件建物を建築所有していたところ、同人が本件建物並に本件土地の賃借権を昭和二十六年七月十九日控訴人に譲渡した事実は当事者間に争がない。

(中略)

次に、被控訴人が昭和二十七年二月十九日その主張の如き契約解除の通知を発し、その頃右通知が真壁章一に到達した事実は当事者間に争がなく、控訴人は「本件土地の賃貸人は市川源太郎であるところ、昭和二十七年二月十九日訴外真壁章一に対してなした賃貸借契約解除の通知は被控訴人がなしたものであるから、解除の効力を生じない。」と主張する。然し民法第六百十二条は、賃貸人が賃貸借契約を解除するまでは賃貸人の承諾を得ないでなされた賃借権の譲渡又は転貸が賃貸人に対しても有効であるとする旨を規定したものではなく、賃貸借契約が解除されないで存続していても、賃貸人の承諾を得ないでなされた賃借権の譲渡又は転借は、譲受人又は転借人がこれをもつて賃貸人に対抗し得ない旨を規定したものである。従つて、本件土地の賃貸人が市川源太郎であつて、同人と訴外真壁との間の賃貸借契約がいまだ解除されていないとしても、前記認定のとおり本件土地賃借権の譲渡について右源太郎の承諾がないのであるから、控訴人は賃借権の譲渡をもつて右源太郎に対抗することができないのである。然らば控訴人は結局本件土地所有者たる被控訴人に対抗して本件土地を占有し得べき権限はなく、右主張は理由がない。

(中略)

更に、控訴人は「賃借権の譲渡につき賃借人たる被控訴人が承諾しないから、本件建物の買取を請求する。」と主張する。

然るに、前段認定のとおり本件土地の賃貸人は市川源太郎であつて被控訴人ではないから土地賃貸人でない被控訴人に対して本件建物の買取を求める控訴人の主張は元来理由がなく、被控訴人の控訴人に対する本件建物収去による本件土地明渡を求める第一次の請求は理由がある。

(牛山 岡崎 渡辺一)

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